理事長ご挨拶

学校法人 関西金光学園・理事長ご挨拶

学校法人 関西金光学園 理事長・学園長 写真

学校法人 関西金光学園 理事長・学園長 湯川彌壽善

学校法人 関西金光学園は、全国の金光教の教会と信奉者の祈りを受け、その願いが人的、財的に結実して設立されました。現在大学一校と高校三校(内中学併設二校)をも って、高等教育、学校教育に携わっています。
「金光さんの学校に行ったら、勉強もさせてくれる、スポーツもさせてくれる、加えて心の教育までしてくれる」。こう言っていただける学校を目指してまいりたい。ひとことで言えば、これが私たちの願いです。

教育とは、失敗したからといって簡単にやり直しがきくような性質のものではありません。しかも、就職や進学に留まらないもっと広い意味で、人の運命を左右するような責任の重いものでもあります。このことを真正面から受け止め考えますと、そのようなやり直しのきかない、重い責任に耐えうる精神を自分は持ち合わせているのか、果たして自分にできることなのか、といった揺り返しのような思いもいたします。しかしこの学園が創設以来、ここまで年月を積み重ねてまいりましたのは、そういう責任の重さを受け止めてなお余りある、教育への一つの大願に支えられてきたからです。

その願いとは、本学園創設に動き出した折に、初代理事長によって表明された「世のお役に立つ学校を作りたい」という基本理念です。創設以来その理念の具現化と継承へ向け、各校教職員、関係者の方々の多大な努力の結果、学園はこの30年で急成長を遂げることができ、今日各方面で認めて頂ける学校となりました。これはいわば、学校としての目に見える部分の成果ですが、世の中は目に見えるものだけで成り立っているわけではありません。ですから、「世のお役に立つこと」を求めていくには、目に見えない部分も同時に大切にしなければなりません。

今の世の中では目に見えないもの、つまり「心」の問題が疎かにされている―。「見えない心の教育」が欠けている―。そう懸念しています。冒頭のビジョンに「心の教育までしてくれる学校」と加えたのは、そういう意味からです。この点、言葉の上では〝心の教育〟とか〝宗教情操教育〟といった表現を連ねることになりますが、何も難しいこと、特別なことをしようという意味ではありません。

人間は、自分一人で生きているわけではないと知ること。周りの人やものによって、生かされて生きていると分かること。つまり自分の本当の姿を知ること。そして、思いやりのある豊かな心を持つこと。人の痛みが分かること。人と一緒に喜び合えること。ありがたいと思えること。生き甲斐と喜びを見出せること・・・。そういった人間が生きていく上で、一番大切で基本になることをしっかり求めていきたいという、それだけのことです。
 「人間は人間らしくすればよい」とは金光教祖の言葉ですが、人間らしい生き方とはどういう生き方でしょうか。はっきり答えを出すのは難しいことですが、それでも〝自分は人間らしい心をもった人間であるか。人間らしい行動のできる人間であるか〟と、問うてみることはできます。
 「大海の水を柄杓ですくう」という喩えに近いものであっても、教育を通じた本学園での取り組みが、人間が人間らしく生きていける社会の実現に繋がっていくことを念願する次第です。